獣医師になったきっかけ~小学6年生から高校生のころ

こっそりイヌを飼う

それでも動物全般に興味があったのは事実で、小学6年生の時にたまたま子犬を拾いました。白くてふわふわ、あどけない黒い瞳、どうしようもなく可愛い!!心をわしづかみされました。そのまま家に連れて帰ると家では飼えないので捨ててきなさいとの一言。手放せるはずはなく、迷った末に親友と一緒にこっそり飼うことにしました。場所は「秘密基地」、当時建設中の巨大団地があったのです。名前を「ロン」とつけ、ドッグフードや容器などをおこづかいで買うのも楽しくて、何もかも初めてでうれしくて仕方ありませんでした。しかし、実際に飼い始めると日中のわずかな時間しか一緒にいることができず、寂しそうにすがりつく様子に気の毒なことをしたと気づきました。3日目にはちゃんと飼ってくれる飼い主を探しはじめ、ロンを抱いて一軒一軒回り子どもが頼み込んだのが良かったのか、案外あっさりと大きなお家のご夫婦が引き取ってくれました。小学校のすぐ近くだったにも関わらず、それきりロンに会うことはありませんでしたが、きっと大事にしてもらっていると信じて安心していました。

いとうづ遊園地にもよく行きました

子ウサギ、ぼろぼろのニワトリ、汚い牛舎

小学生の時の動物にまつわる嫌な思い出がありました。学校のプール横にぼろぼろの飼育舎があり、ウサギとニワトリが飼育されていました。生まれたばかりの赤裸の子ウサギが死んでいたり、つつき合ってぼろぼろになったニワトリがいたり、私にとってはとても怖い場所でした。また、学校の真横に牛舎がありホルスタインが数頭ほどいました。どうしても気になってある日こっそり入ってみると、暗く汚れた狭い中で静かに生きている様子に衝撃を受けました。どの動物たちも汚くて可哀そう、という印象しかありませんでした。

ちゃんと飼育すればこんなにかわいい姿がみれたはず

迷子のセキセイインコ

 

中学生の時、ついに我が家にペットと呼べる動物が来ました。母親が洗濯物を干していたときに肩に止まってきた迷子のセキセインコ、「ピーコ」でした。しかし、機嫌が悪いと噛むし飛んで逃げるので、それほど愛着がなかった気がします。今思えば単に接し方を知らないだけでピーコには悪いことをしたと思っています。

クレスとの出会い

こうして動物と一緒に暮らす楽しみを知らないまま、高校1年生になった時でした。学校から帰ると小さな子犬がいました。「どしたんっ!?」(北九州では非常に大きな驚きと喜びを表す方言のひとつ、たぶん)あんなに飼いたかったイヌが何の前触れもなくいるなんて!デパートで見つけた妹が欲しいとねだったそうです。実は高3の兄も私もおそらく大学は外に出るだろうと、まだ小学生の妹がさみしくなることを親はひそかに心配していました。このためイヌを飼うのはちょうどいいタイミングだったのです。三河雑犬として(つまりあくまで雑種)1万円という格安で売られていた柴犬系のオスでした。名前は当時家族みんなが大好きだったTV番組「アドベンチャーファミリー」のイヌ「クレス」にしました。飼って間もなく私の靴下を食べてシマシマのうんちを出したりやんちゃな子犬に家族全員が振り回されながらもいつも賑やかで楽しい毎日でした。外で飼っていたクレスは部活で真っ暗になって帰ってくるといつも尻尾を激しく振って迎えてくれました。甘えん坊で17kgにもなった大きな身体を無理やり膝の上に乗せると安心して目を閉じている様子が愛しくて愛しくてこの時間が永遠に続けばいいと何度も思いました。(高校卒業後13年ぶりに北九州に戻った時も存命で、17歳という外飼いにしては比較的長生きしてくれました)

高校のへなちょこ剣道部員時代

先生の一言で進路に迷う…

高校2年生のとき、そろそろ進路を決めなければと進路指導室へ行きました。野生動物の研究者になるにはどうしたらいいか先生に尋ねると「生物学系やね。でも就職できんよ。」と、あっさり言われました。そのころは自然全般に興味があったので、それなら農業をやってみたいと、温めた思いを告げると「は!?」と目を丸くされました(その先生は知識こそ偏っていたけれど個性的で愛情深く大好きでした)。農業するってそんな珍しいのだろうか…。とたんに進路が見えなくなってしまいました。

到津の森公園時代に実際に翼を骨折したツグミを治療した時のもの

翼の折れたツグミ、ずぶ濡れの足の悪い野良犬

そんな時に2つの出来事がありました。庭に野鳥のツグミが迷い込んできたのです。翼が折れているらしく、近づくと飛び跳ねて必死で逃げますがほっとけないので何とか捕まえ動物病院に連れて行きました。ところがそこの先生から「うちはイヌとネコしか診ませんから」とあっさり断れました。どうすれば…とりあえず籠に入れイチゴをあげるとつついてくれました。ちょっと安心したものの、翌朝見ると死んでいました(今思えばツグミは昆虫食ですし、つついたのは単なる攻撃でした)。また、車で出かけた時のことです。土砂降りの雨が降る中、ずぶ濡れの野良犬が後ろ足をかばいながらよろよろと3本足で歩いていました。ツグミや野良犬…こうした誰のものでもない動物たちの命は一体だれが診てくれるのだろう。そう思った瞬間に「なら私が診る!」と思い立ったのです。(そのあと進路指導室に行って「獣医師になる!」と伝えると例の先生から「うちの高校のレベルじゃ絶対無理!」とまたしても一刀両断されたのですが…)

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